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白竜LEGEND 22巻

2012年04月17日

天王寺大原作、渡辺みちお画『白竜LEGEND』は独立系暴力団・黒須組の若頭・白竜こと白川竜也を主人公とした作品である。話の中心は暴力団のシノギである。稲川会による東京急行電鉄株買占め事件など現実に起きた事件を下敷きにすることが多く、劇画的な意味でのリアリティがある。

第22巻は前巻から引き続き、「野獣空港」編である。単行本では複数のエピソードが収録されることが多いが、この巻では丸々「野獣空港」編である。しかも完結していない。敵はゼネコン、都知事、暴力団、主人公サイドも白竜と下請け建設会社というように複数のアクターが各々の思惑で動いている点が物語を複雑にしている。

「野獣空港」編では大手ゼネコンとヤクザの癒着をあからさまに描く。東急建設が暴力団系企業を下請けに使ったことも明らかになっており、タイムリーなテーマであるが、この巻では一歩踏み込む。建設会社が暴力団と癒着することについて、建設会社側は暴力団からの嫌がらせを避けるためと言い訳することが多い。

実際、東急建設も警視庁組織犯罪対策3課に「暴力団を懐柔しないと暴力団の嫌がらせを受ける」と釈明したという(「暴排通告企業脅す 道仁会系社長を逮捕」産経新聞2011年10月18日)。この種の言い訳によって暴力団と癒着した建設会社は自分達にも被害者的な側面があると自己正当化を図ることができる。

しかし、これは我が身かわいさの言い訳に過ぎない。「野獣空港」編のゼネコンはマスメディアに真実を話そうとする下請け建設会社を黙らせるために暴力団を利用した。暴力団と癒着する建設会社も市民社会の敵である。建設業界と暴力団の癒着の闇の深さを浮き彫りにする。

野獣空港編の面白さは下請け建設会社という弱い立場の存在が主人公サイドのアクターになっていることである。白竜という何事にも動じないチート的な存在が主人公である通常の展開とは異なる魅力がある。下請け建設会社には白竜のような知恵も力もない。普通ならばゼネコンに利用され、泣き寝入りさせられる存在である。

それが白竜に煽られてゼネコンと対決姿勢を示した結果、ゼネコン側の反撃で一層窮地に追い込まれてしまう。白竜に一杯食わされたとぼやきたくなるところである。実際、下請け建設会社社長は、それに近い発言をしている。

しかし、それで終わらないところが、下請け建設会社の偉いところである。泣き寝入りをしたところで、それにゼネコンが恩義を感じることはなく、潰されるだけだと分析する。故にゼネコンとの対決姿勢は正しかったと結論づける。
http://news.livedoor.com/article/detail/6459593/
残念ながら、ここまでの考えに到達できる人は現代日本では少ない。大企業などはアメとムチで消費者や労働者、下請け企業など立場の弱い人々に迫る。アメが本当にアメならば一応は取引として成り立つが、往々にして悪徳企業はアメの期待を持たせるだけで何らのコミットもしない。用が済めば弱者の期待は裏切られる。
http://yaplog.jp/hayariki/

ところが日本では甘い期待から戦うことを放棄し、すりよってしまう愚か者も少なくない(林田力「ネット右翼は東京都青少年健全育成 条例で目を覚ませ」PJニュース2010年12月20日)。下請け建設会社社長のような腹をくくった人が多ければ閉塞感漂う日本社会も、もっとましなものになるだろう。
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