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『異世界居酒屋「のぶ」』

2017年10月05日

蝉川夏哉原作、ヴァージニア二等兵画、転(キャラクター原案)『異世界居酒屋「のぶ」』は中世ドイツ風の異世界の城塞都市に現代日本風の居酒屋が開業する漫画である。異世界の人々は、海鮮丼のような未経験の料理や冷えたビールなど現代文明の提供する料理に驚嘆する。最近流行の異世界転生物の一種と言えるが、現代から食材や設備・備品を容易に調達できる設定になっている。
未知の現代料理に驚嘆する展開は戦国時代にタイムスリップしたシェフが現代料理の知識を駆使して戦国時代の人々に料理を提供する『信長のシェフ』と共通する。『信長のシェフ』は現代の洋食を提供して戦国時代の人々に驚かせた。これに対して本作品はヨーロッパ風の人々に和食を提供する点で逆『信長のシェフ』である。
但し、『信長のシェフ』では現地の物から料理を作らなければならず、食材調達に苦労しているが、その要素は本作品にはない。その代わり、本作品では異世界の人々が、より直接的に現代料理を味わえるようになっている。
「現代文明すごい」という点では『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』と重なる。ここには現代文明が当たり前の社会で育った世代の価値観が反映されているだろう。現代文明が自然を圧倒することが当たり前になっている。フロンガスの規制でオゾン層が回復しつつあるように環境破壊も文明による制御が求められる。人知では計り知れない自然の逆襲というような発想は、上の世代が持つほど当たり前ではなくなっている。
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『約束のネバーランド』

2017年09月17日

白井カイウ原作、出水ぽすか画『約束のネバーランド』(ジャンプコミックス)は人間を食べる鬼が支配する世界で食用のために飼われている子ども達が脱獄を目指すファンタジー漫画である。

週刊少年ジャンプ連載の漫画である。週刊少年ジャンプと言えば『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』のようなバトル物が王道という印象があるが、『DEATH NOTE』のような頭脳戦の作品もある。本書も高度な頭脳戦が展開される。これも週刊少年ジャンプの魅力である。

第4巻はノーマンが出荷を宣告されるというピンチから始まる。この巻の出来事は重要である。子ども達には何かを犠牲にして実現するという考え方と、犠牲にせずに実現するという考え方が対立していた。後者は理想的であるが、実現性は低い。真面目に実現性を考えるならば後者を考える必要がある。

ところが、主人公エマは後者しか考えようとしない。その理想主義者ぶりが、うざく感じるほどである。もしエマの思い通りに展開したら、物語が御都合主義になってつまらなくなるだろう。この意味で、この巻の出来事は物語に現実感を持たせた。

その後はエマらしく犠牲を出さない展開になる。しかし、それも最初の犠牲者があってのものである。「あれも、これも」ではなく、「あれか、これか」のシビアさがある。

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『ONE PIECE 86』

2017年08月11日

尾田栄一郎『ONE PIECE 86』(集英社、2017年)は、いよいよビッグ・マムの茶会(結婚式)が始まる。スイート三将星の最後の一人カタクリが登場する。カッコいい敵キャラクターは久しぶりである。未来が見えるということでチートになると懸念されたが、焦るところでは焦っている現実的な存在である。口元が常に隠れている点が気になる。シリアスなイケメンキャラに見えるが、実は口裂け男というギャグがあるかもしれない。

ビッグ・マム(シャーロット・リンリン)は情緒不安定である。永続的な領土を持ち、海賊団というよりも国と呼べる体制を持っているが、ルフィ達が関わらなくても放っておけば自滅するのではないか。

四皇のうち、白ひげとシャンクスは人格者であるが、ビッグ・マムとカイドウは人格に問題がある。四皇として同列に並べられるか。自分の感情から自由になっていないのに海の皇帝のような存在と言えるのか。完成された悪のボスと言えばクロコダイルを超える存在は出ていないと感じる。

この巻ではジンベエが魅せる。海侠の通り名にふさわしく、筋を通した。ビッグ・マムのような存在に筋を通す必要があるかとの疑問はあるが、白ひげ亡き後の魚人島の後ろ楯になったという義理はある。四皇が登場して以来、王下七武海は小物感が出ていたが、王下七武海の価値を押し戻すことに貢献した。
http://www.hayariki.net/onepi.html

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『ONE PIECE 8』

2017年05月14日

尾田栄一郎『ONE PIECE 8』(集英社、1999年)は首領クリークとの戦いが決着する。副題は「死なねェよ」。無数の武器も腹にくくった「信念」という名の一本の槍には敵わない。ワンピースの戦いを象徴する言葉である。
ここにサンジが麦わらの一味に加わる。ここはワンピースでも屈指の感動的なシーンである。この巻では三大勢力や王下七武海という後に出てくる重要な設定が始めて語られる点も注目である。ジンベエも名前だけ登場する。
後半は魚人海賊団・アーロン一味の話になる。アーロンは自分達、魚人を人間より優れている万物の霊長と呼ぶ。これは現実の人間に対する強烈な風刺である。作者には人間中心主義を相対化する視点が感じられる。
アーロンは、その前の敵の首領クリークとは対照的である。クリークは腹心の部下さえ使い捨てにする最低野郎であるが、アーロンは仲間を同胞と呼ぶ。部下が傷つけられると怒る。クリークは逆らう部下を容赦しない。意見具申さえ許さない。完全な恐怖支配である。これに対してアーロン一味ではアーロンが怒りに任せて暴走しそうになると部下が押し留めたこともある。悪役も様々であり、面白い。
ナミがアーロン一味の幹部として登場するが、ナミと向き合った時のゾロの態度がカッコいい。憎まれ口を叩くが、相手を信頼している。方向音痴で方角は見失うが、人は見ている。さすが麦わらの一味の副船長格である。
http://www.hayariki.net/onepi.html
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ワンピース85

2017年05月06日

尾田栄一郎『ONE PIECE 85』(集英社、2017年)はホールケーキアイランド編の続きである。すれ違っていたルフィ達とサンジであるが、この巻では思いが一つになる。このような展開は熱くなる。

ホールケーキアイランド編ではサンジの出自が明らかになる。「実は貴種でした」という展開は最近の漫画に少なくないが、私は複雑な思いがある。親の格差が子にもつながる格差社会を反映しているように感じられるためである。それでも、この巻は家族を見捨てられない思いという普遍的なテーマで上手に再構成した。

麦わらの一味は、新たに連合を結成する可能性が出てきた。トラファルガー・ローの時と異なり、いけすかない相手である。マフィアではなく、ギャングの通り名であることが理解できるエピソードが語られる。マフィアには沈黙の掟(オメルタ)のように忠誠心が求められるイメージがある。これに対してギャングはゴロツキである。

文字通りの意味で共通の利害だけで結ばれた連合になる。ここでのルフィの態度が面白い。話してみることは頭ごなしに否定しない。一方で実際に会うと友達が受けた被害のことを蒸し返す。安易に過去を水に流す存在ではない。かつての少年漫画は「昨日の敵は今日の友」が定番の展開であったが、過酷なイジメなどの現実と直面する現代の子ども達にとってリアリティに欠ける(林田力「【コミック】過去の敵への態度に注目『ONE PIECE 第51巻』」ツカサネット新聞2008年9月17日)。
http://www.hayariki.net/onepi.html
この巻ではジンベエが参謀役になっている。ジンベエは魚人島編で仲間にスカウトされている。麦わらの一味の比較的新しいメンバーのニコ・ロビンやフランキー、ブルックも年長者で、そのような役回りを期待しても不思議ではないが、ゾウで寝入ってしまうような抜けたところもある。ジンベエは今の麦わらの一味に足りない要素を補える存在である。

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